石田眼科医院

〒330-0843
埼玉県さいたま市大宮区吉敷町1丁目88番地

電話:048-641-0262

診療案内

【1】眼底の病気(網膜疾患)

眼球はカメラとよく似た構造を持ち、その『フィルム』に相当する部分は『網膜』とよばれます(正常眼底写真、正常OCT)。眼球の中の奥の部分に当たり、眼底とも呼ばれます。詳しい眼底検査が必要な病気では、基本的に散瞳剤を点眼して瞳孔を広げたうえで眼の奥を見る詳しい眼底検査を受けることになります。散瞳後は数時間にわたりぼやけて見えるので、運転は避けていただくことになります。お帰りの際にご自身でのお車の運転はできなくなりますのでご来院の際にはご注意ください。

図1

図2

1.加齢黄斑変性

加齢黄斑変性は網膜の中心部にある『黄斑』に生じる病気で、中心が見づらくなります。文字や線を見ると歪んで見えたり、真ん中がグレイがかってぼやけて見えたりします。50歳以上の人の約1%がかかっているといわれます。(※1)眼底検査や眼底の断層像を撮影するOCT検査が重要です。
加齢黄斑変性には、2つのタイプがあります。黄斑部に新生血管という異常な血管が生じ、その血管からの出血や血液成分の漏れを生じる滲出型加齢黄斑変性(図1)と、黄斑部が徐々に傷んで変性する萎縮型加齢黄斑変性です。滲出型には治療があり、一度進行してしまうと治療をしても元通りにはなりにくいため、早期発見・早期治療が重要です。また、眼底にドルーゼン(図2)という所見がある人は、加齢黄斑変性の予備群といわれ、将来発症するリスクがあります。また、タバコや、高血圧・動脈硬化といったメタボリックシンドロームは、発症リスクとされます。ご心配な方は、お早めにご相談ください。
加齢黄斑変性の治療には抗血管内皮増殖因子製剤(抗VEGF製剤)を眼内に注射する抗VEGF療法と、全身に注射をして特殊なレーザーを行う光線力学的療法(PDT)があります。病気のタイプにより適した治療を選ぶことが大切です。

※1 出典 日本眼科学会 「目の病気より

図3

図4

2.糖尿病網膜症

糖尿病があると、眼底の血管や神経が徐々にもろくなり、出血や網膜剥離といった変化が進むと失明に至ることがあります。日本の失明原因の第2位といわれます。(※2)主な治療の対象は、糖尿病黄斑浮腫増殖糖尿病網膜症(及びそれに近い病変を持った方)です。いずれも早期発見が重要で、自分で症状を感じた時にはすでに進行していることが多いので、糖尿病ということが分かった時点で、定期的な眼底検査を受けることをご検討ください。糖尿病による眼底の病気には次のような病状の種類、つまり病型があります。
①糖尿病黄斑浮腫(図3):糖尿病で血管が弱くなって、血管の中の液体が漏れて眼底にむくみを生じます。中心に生じると中心が見づらくなります。詳しい眼底検査のほか、OCT検査が有用です。加齢黄斑変性にも用いる抗血管内皮増殖因子療法(抗VEGF療法)、ステロイドの眼局所への注射、網膜光凝固術(レーザー治療)などによりにより治療します。
②増殖糖尿病網膜症(図4):糖尿病で血管が弱くなったり細くなったりして、血流が悪くなると、眼はもっと血管を作るように指示する因子を出します。その一つが血管内皮増殖因子(VEGF) で、過剰にあると病的で弱い血管ができてしまいます。この血管は容易に大出血したり、血管網を作って眼底の網膜を引っ張り、けん引性網膜剥離を引き起こしたりして、失明につながります。詳しい眼底検査が必要です。非常に進行すると硝子体手術が必要になりますが、それをくいとめるために適した時期に網膜光凝固術(レーザー治療)を行う必要があります。

※2 出典 公益社団法人 日本眼科医会 「目の定期検査のすすめ

3.黄斑上膜

加齢黄斑変性と似たような症状(歪んで見える、見づらい、ぼやける)などがあります。しかし、加齢黄斑変性の病変が網膜の下にあり、治療は薬であるのとは異なり、黄斑上膜の病変は網膜の上にあり、治療には手術が必要です。これらの見分けには、眼底検査と眼底の断層像を撮影するOCT検査が重要です。
黄斑上膜があっても、必ずしも手術をする必要がない人もいます。しかし、黄斑上膜があるのに非常に長く放置しておくと、そのあと治療をしてもあまり回復しない場合もあります。ぜひ、お早めにご相談ください。また、黄斑上膜と異なり、加齢黄斑変性はすぐに治療をしたほうが良いのですが、自覚症状からは必ずしも区別できませんので自己判断せずに早めに眼科受診をした方がよいです。

4.中心性漿液性脈絡網膜症

中心にグレイの丸が見える、ゆがむ、ぼやける、左右で物の大きさが違って見える、などといった症状があります。眼底(網膜)の中心を『黄斑』と呼びますが、その黄斑部の網膜の後ろに液が貯留すると発症します。30‐50歳代の男性に多く、ストレスと関係があるとされます。自然に治ることもありますが、再発したり、長期にわたり治りにくい場合には、治療が必要になることもあります。眼底検査OCT検査が有用です。

5.網膜中心静脈分枝閉塞症

眼底の静脈血管がつまって眼底出血を起こします。出血した部分はグレイがかって見えたり歪んで見えたりします。眼底の中心である『黄斑』まで出血が及ぶと黄斑浮腫という黄斑のむくみ(はれ)をきたして視力も低下します。なるべく早く浮腫を引かせるために加齢黄斑変性にも用いる抗血管内皮増殖因子療法(抗VEGF療法)、ステロイドの眼局所への注射、網膜光凝固術(レーザー治療)などによりにより治療します。また、長期的には、増殖糖尿病網膜症と類似の新生血管を発生することもあり、その場合も網膜光凝固術(レーザー治療)による治療が必要になることがあります。高血圧や血液が粘ちょうな(ドロドロした)状態の場合はリスクが高く、日本人の40歳以上の約2%が発症するとされる頻度の高い病気です。(※3)

※3 出典 日本眼科学会 「日本人における網膜静脈閉塞症の有病率と危険因子:久山町研究

6.飛蚊症

眼はカメラにたとえられますが、レンズとフィルムの中間にあたる部分を硝子体(しょうしたい)と呼びます。この部分の変化があると、蚊やごみが飛んでいるように見える症状が出ることがあります。この症状を飛蚊症と呼びます。飛蚊症は多くの場合は、年齢的な変化ですが、ときに網膜剥離や眼底出血を生じていることがあるので、新しく症状が出た時、急に増えた時には眼科での詳しい眼底検査が必要です。

7.網膜裂孔・網膜剥離

眼はカメラにたとえられますが、フィルムにたとえられる網膜に裂孔(あな)が開いて、硝子体の水分が網膜の裏に回ってはがれる病気です。飛蚊症や視野欠損、視界の一部が隠されたように見えるなどの症状があります。網膜剥離の進行の速さは、裂孔のできる位置などにより異なります。速やかに手術をする必要がありますので、症状がある場合は急ぎ眼科を受診してください。網膜裂孔を生じていても、まだ網膜剥離になっていなければ網膜光凝固術(レーザー治療)をすることができます。診断のためには、散瞳剤を点眼して充分に瞳を広げたうえで詳しい眼底検査を受けることになります。

【2】緑内障

図9

眼の中の圧力(眼圧)が高い、すなわち眼が固いと視神経に負担がかかりダメージを生じることがあります。これが緑内障で、視野の一部が見えない状態、すなわち視野欠損を生じます。放置していると徐々に進行して最終的には失明することがあります。日本人の失明原因の第1位です。(※4)治療としては眼圧下降の点眼により視神経への負担を減らし、ダメージの進行を止めることが目標です。一度視神経のダメージが進行し、視野欠損が進行すると元に戻す治療はありません。そこで緑内障も早期発見・早期治療が重要です。診断には視野検査が必要で、中心部分を細かく見るハンフリー視野検査や全体を大まかに見るゴールドマン視野検査があります。さらに、最近では視神経を含む眼底の断層像であるOCT検査も有用であることが分かり利用されています。眼底検査でわかる視神経乳頭陥凹拡大という所見を示すことも知られます(図9)。特に進行が激しい場合は、眼圧下降のための手術をすることもありますが、手術の目的は視野の回復ではなく、さらなる進行を食い止めることにとどまります。

※4 出典 公益社団法人 日本眼科医会 「目の定期検査のすすめ

【3】白内障

眼はカメラにたとえられますが、カメラのレンズにあたる部分を水晶体といいます、これが年齢とともに濁るのが白内障です。50歳の人の半分、80歳ではほぼ全員にあるとされます。(※5)アトピー性皮膚炎や糖尿病などにより、若くして白内障になることもあります。眼の中に濁りがあり、その濁りが通過する光を遮るために見づらくなるので、濁りを除かないまま眼鏡をかけても見えるようにはなりません。濁りすなわち白内障が進行したら手術が必要になります。定期的な検査をご検討ください。補助的ですが、進行予防のための点眼を継続する方もいます。

※5 出典 公益社団法人 日本眼科医会 「白内障手術をめぐる現在の環境

【4】眼表面の病気

1.ドライアイ

眼の表面は瞬きのたびに涙が覆うことで守られていますが、涙が少なかったり、涙が乾きやすかったりするとドライアイになります。そのために角膜などの眼表面に傷がつくと、ごろごろしたり痛みを感じたりします。人工涙液の点眼で眼表面の状態を整える必要があります。VDT作業をしている人が感じる目の疲れにも、ドライアイが関係するものが少なくありません。10秒間目を開け続けていられない人はドライアイの可能性があると言われています。

2.アレルギー性結膜炎

目がかゆい、充血する、ごろごろするなどの症状があり、花粉に対するアレルギーの場合は花粉症といいます。ハウスダストやペットの毛などに対するアレルギー反応を起こす人もいます。点眼薬で治療します。できればアレルギー反応が強くなる前から点眼を開始した方がピークの症状が抑えやすいとされています。毎年同じ季節に症状が出る方は、お早めに受診されることをご検討ください。

3.コンタクト障害

眼が痛い、ごろごろする、充血するなどの症状をコンタクトユーザーでお持ちなら、早速、眼科検診を受けることを勧めます。眼の表面で黒目の部分を角膜といいますが、その部分の上皮に傷がつくことがあります。この傷を放置すると潰瘍になりさらに痛みが増すことがあります。また、傷が悪化すると白く濁って視力低下につながることがあります。コンタクトレンズを水道水で洗って使用すると、水道水に含まれるアカントアメーバの感染による角膜混濁をきたすことがあります。できるだけ早い治療が必要な場合が多いので、早めに受診してください。
また、長期にコンタクトレンズを使用していると、角膜を透明に保つための角膜内皮細胞が障害されることがあります。角膜内皮細胞は生まれた後から徐々に減り、増えることはないとされており、あまり少なくなると角膜は透明性を保てず白濁し、視力が低下します。角膜内皮細胞を守るためにも、適した使用と検診が必要です。

4.流行性角結膜炎

アデノウイルスによる結膜炎で伝染します。激しい充血、眼が張り付くほど激しいめやにを特徴とします。かぜ症状やリンパ節の腫れを伴うこともあります。感染してから1週間ほど潜伏期間があり、その後発症します。片眼ずつ発症する場合もあれば、両眼ほぼ同時に発症する場合もあります。ウイルスに対する直接の薬はないので、混合感染を防ぐための抗生剤や抗炎症剤の点眼で治療します。接触感染するので、他人にうつさないように注意することも重要です。

【5】まぶたの病気

1.ものもらい

まぶたが腫れた、まぶたが痛い、めやにが出るなどの症状を引き起こします。まぶたにある脂を出す腺などの炎症で、細菌感染を伴うこともあります。抗生剤や抗炎症剤の点眼をすることで、より早く炎症を抑える治療をします。化膿している場合は抗生剤の内服が必要であることもあります。炎症がある程度治まっても大きなしこりが残る場合は手術により切開する場合もあります。

2.涙目・流涙

涙がこぼれるような気がする、実際にこぼれるほど涙が出る、などの症状を訴える場合には、いくつかの原因が考えられます。
⓵鼻涙管閉塞症・涙嚢炎(るいのうえん):涙液の下水溝といえる鼻涙管やその途中にある涙嚢が細かったり、感染や炎症を伴ったりして通過が悪くなると、眼に涙があふれます。まずは感染や炎症を抑えるための点眼による治療を開始しますが、場合によっては手術が必要になることがあります。
②ドライアイ:本来、眼表面を覆う涙が足りないと、眼表面が乾燥して荒れてしまいます。すると刺激により反応性の涙がかえって出て、流涙を感じることがあります。ドライアイの治療が必要です。

【6】小児の眼の病気

1.斜視

両眼の見る向きのバランスが崩れた外斜視や内斜視は大人にもありますが、小児で発見されるものが多くあります。症状に適した時期に治療が必要です。大型弱視鏡などで斜視の程度やパターンを測定して、治療のための眼鏡を作製したり、経過観察をしたりします。

2.弱視

眼は生まれてから小児(10歳程度まで)の間に発達しますが、その間適した状態に保たれないとうまく発達(成長)せず、眼鏡をかけてもよく見えないままになってしまいます。これを弱視といいます。発達段階での検査や治療により、弱視を防ぐことが重要です。